腹腔鏡下避妊手術Laparoscopic Surgery
一生に一度の大切な手術は 痛み負担の少ない選択を
腹膣鏡下避妊手術とは、避妊・去勢手術の手段として近年注目されている、手術方法の一つです。
動物への痛みや体への負担が少なく、早期に退院出来ることが最大の利点と言われています。
当院では、2019年5月に内視鏡システムを導入以降、400件(犬の避妊手術の99%以上:2023年10月現在)の腹腔鏡下避妊手術を実施しました。超大型犬から小型犬および猫までフルサイズに適応しています。
こちらでは、開腹手術との違いや、腹腔鏡手術の特徴を詳しく解説します。
腹腔鏡手術とは?
従来大きく切開をしていた様々な手術が、2-10mmの小さな切開を数ヵ所行うことで出来る方法です。
切開部にはトロッカーと呼ばれる筒状の器具を設置し、トロッカーを通してお腹の中に専用器具を入れて、お腹の中をモニター越しに確認しながら手術をします。
腹腔鏡手術の特徴
- メリット
- ● 手術の傷口が小さい(2-10mm、小型犬の場合は3mmが2カ所、中型犬以上は5mmが2〜3カ所)
● 痛みが少ない
● 術後の回復が早い
● 手術術時間が短い
● 繊細な手術が可能
● 日帰り手術が可能(避妊手術や臓器生検の場合)
- デメリット
- ● 特殊な専門設備が必要
● 高度な専門技術や知識が必要
● 一般の手術と比較して人手が必要
● 適応が限られる
● 手術費用が少し高くなる
アラスカンマラミュート43kg チワワ2.3kg
痛みが少なくて術後回復が早い理由
避妊手術の対象となる卵巣は、靭帯組織によって身体の奥深くに固定されています。
開腹手術の場合は、傷をなるべく小さくして、体外に卵巣を強く引っ張り出して手術を行うため、靭帯組織が引き伸ばされ痛みが強くなるとともに、術後の不快感が高まります。
一方、腹腔鏡避妊手術の場合は、炭酸ガスでお腹を膨らませて、高解像度の内視鏡でお腹の中を丁寧に観察しながら、自然な状態に近いところで手術をするので、痛み負担が少なく術後回復も早くなると言われています。
適応となる手術
※病態によって、適応とならないケースがあります。
完全腹腔鏡手術
【完全にお腹の中で行う手術】
・避妊手術
・腹腔内陰睾時の去勢手術
・胆のう摘出術
・副腎腫瘍摘出術
・予防的胃腹壁固定術 臓器生検(肝臓・膵臓など)
腹腔鏡補助下手術
【腹腔鏡を補助的に利用して、傷を小さく抑えながら行う手術】
・子宮蓄膿症
・膀胱結石摘出術
・門脈体循環シャント
・臓器生検(小腸・大腸など)
開腹手術と腹膣鏡下避妊手術の違い
開腹手術 | 腹膣手術 | |
---|---|---|
傷の大きさ | 熟練度によって傷を小さくすることは可能 | 2mm~5mm程度の傷が2〜3ヵ所 |
痛み | 卵巣を体外に引っ張り出すため、人体組織にテンションがかかり痛みが強い | 体内の自然な位置で卵巣を切除するため、痛みが少ない |
安全性 | 体内で出血や臓器に問題があっても確認出来ない | 映像で体内の様子を観察することが出来る |
動物への負担 | 大きい | 小さい |
入院 | 必要 | 手術当日に退院可能 |
手術費用 | 当院規定の通常料金 | 内視鏡機械が高額なため、高くなる |